一番頭に来るのは、目の前の相手が女だということ。 二番目にムカツクのは、しかも年上だということ。 三番目に苛々するのは、やっぱりそいつが女でしかも世話焼きだということ。
「トロロ?」
今日も今日とて、勝手に上がりこんだこの女はボクの周りをうろちょろと五月蝿い。 ボクよりも年上のくせにボクよりも落ち着きがない。 外が好きなくせにラボに来て、ボクを連れ出そうと企むのも気に入らない。 甘いものばかり食うなと野菜ばかり運んできて料理をするときの鼻歌も耳障りだ。
「なんだヨ」
乱暴にドーナツを齧る。適当に頬張ったそれの生クリームが飛び散った。
は相変わらず笑いながら、高い声で何か言ってる。 今日合った出来事とか外では祭りがあるのだとか、出会った人々とのこととか。 ボクよりも幸せそうに話すその仕草が疎ましくて仕方がない。
「ね、トロロ?」 「だからなんだヨっ」
つい声を荒げてしまった。 しまった、と思うが
はきょとんとしたままこちらを凝視し、それから噴出す。 あまりにも可笑しそうに涙さえ浮かべて彼女は笑う。 笑われたことでまたボクの沸点があがることくらい予想できないわけ? ボクの怒りはまた溢れそうになる。 しかしそれは、
の行為によって停止させられた。 ひょい、と軽く、あまりにも自然に距離を縮めて彼女がボクの唇を舐めた。
「クリーム、ついてる」
甘い、と彼女は笑った。その頬にわずかに朱が混じっているのは、気のせいなんかじゃない。 軽口を叩こうにも、
の腕を取るだけで精一杯だ。 腕を取ってそれにすがって、馬鹿じゃないの、とようやく呟く。 頭の上では、またさっきと同じ笑い声。
あぁ、ほらやっぱりだ。 ボクが一番参るのは、
に抵抗できなくなるくらい心酔しきっている自分自身。
(あぁ、本当に嫌になる!)
(06.12.10)クリームというお題で彼を使わない手はないですね。
久々に砂を吐きました。わたしはこれ以上甘い小説は無理です。
皆さんはまだいけますか?これ充分バカップルですよね?
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