「あら、それじゃ貴方は違う意見をお持ちってこと?」 「あぁそうだ。お前とは頭のつくりが違うもんでね」
その喧嘩が始まったのは、つい五分前だった。何気ない会話だったと思う。彼らを背後にしてタママやモアと話していたケロロには全て聞き取れたわけではないが、普通の会話をしていたのだと思う。けれどいつの間にか声はどんどん険悪になり、振り返れば
とクルルはすでに臨戦態勢に入っていた。
「あら、それじゃ聞きますけどね。貴方に何がわかるって言うの?」 「オレが知りてぇことは大概知ってる。それ以外は無意味なもんだろ」 「なんて傲慢!あなたにはわかってないものがあるわ。それは人の心よ」 「悪いねぇ。オレはケロン人だ」 「それだって『人』が付くじゃない。要は感情の機微を知りなさいってことよ」 「それこそ無理な話だぜぇ?オレの信じるもんは正確なデータであって、裏づけされて決定されたもんなんだよ。それがなんだ、人の心?そんなもん知ってなんの役に立つ」 「あぁ、嫌だ嫌だ!!損得の感情でしか人生を測れないなんて!銅像だってもっとまともなことを考えるわ!」 「そりゃ同意見だ。こっちだって人形と話してた方がよっぽど愛嬌があるぜぇ」 「ふん!全部知った気になって、馬鹿みたい。クルルの知らないことなんて、この世にいっぱいあるんだから!」 「おいおい、オレが知らないもんをお前が知ってるっつーのかよ。ありえねぇな。不可能は覆せねぇことの表象だってこと知らねぇのか」 「ありますぅだ。例えば、そう!ド●ミちゃんの誕生日とか!」 「はぁ?●ラミ?」 「そう!12月2日なんだよー。知らなかったでしょー」 「子守りロボットの補助役として作られた妹ロボットで2114年12月2日生まれ。好きな食べ物はメロンパン。特にクッキー生地でできた皮の部分が好物で、嫌いなものはゴキブリ。特技は歌…………の、国民的アイドルキャラのことを知っててもねぇ」 「詳しすぎでしょう!気持ち悪いっ」 「気持ち悪い言うな」 「だって、うわぁ、ここにオタクがいるよ。でも形はクルルに似ているよね」 「はぁ?脳でも沸いたか。それとも腐ったか」 「失礼な。黄色だし、リボンでもすれば結構似てるんじゃない?」 「はっ。いい加減にしろよ。第一、オレはロボットじゃねぇ」 「性別の方を否定しようよ。でも本当に可愛いかも…………」 「…………おい?」 「ねぇ、科学者だったら探究心は伸ばすべき長所だってわかってるよね?クルルの信条はトラブル&アクシデントよね?」 「オレに降りかからねぇトラブルとアクシデント限定だ」 「心が狭いなぁ。でも一度思ったことをやめてはいけないよ」 「やめろ。そんな真っ赤なリボンどっから出しやがった、おいっやめろっつってんだろー!おいっむぐっ…………!!!」
それからあったことは、記憶処理をされているらしく、我輩、まったく覚えていないのであります。
後に彼の上司は首をかしげた。 だが彼の顔には、笑いすぎてはずれた顎を固定する包帯が生々しかったという。
(06.12.10)突然くだらないことを書きたくなるときがあります。それが今このときだった。そういうことです。
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