彼はわたしに当たる雨粒全てから守るように身を挺した。それはまるで父のように。
満員電車でわたしの居る場所を確保してくれた。人との距離感を、上手く掴めるように。
嘘の笑顔と、本当の笑顔と、そしてそれら全てがわからなくなるくらい笑わせてくれた。
いつしかわたしは顔を挙げ、陽光の下を胸を張って歩けるようになっていた。
何もかもが彼のおかげだ。彼がわたしを慈しみ、支えてくれたから。
わたしは前を向いて進んでいく強さを持つことが出来た。
ねぇ、本当に、本当にありがとう。
「拙者は、褒められるようなことをしてはいないでござるよ」
彼、少しだけ声を落としてわたしを見つめる。
なぜ?だってわたしはあんなに弱かった。
「拙者は、そんな
殿だから必要としたのかもしれないのでござる」
弱かったわたし。それに彼も救われていた?
守ることで慈しむことで、ガラスのようなわたしを支えることで、彼が自分自身を救っていたというなら。
今のわたしはもう彼に必要とされていないのかな。
「
殿を愛おしいと思う気持ちに偽りはござらん。しかし、拙者は怖い」
気丈な彼の空色の瞳が歪む。顔半分を覆う手は、震えていた。
わたしは強くなった。強くなり前を歩くわたしの先にはきっと開けた未来がある。それを待ち遠しいと思えるくらいになったわたしに対する不安が、彼を苦しめている。
あぁ、そうか。ずっとわたしには貴方だけだった。
それは、わたしだけだと思っていた。でも、違ったんだね。
「わたしは、ずっとドロロだけだよ」
貴方にはわたしだけだった。優しさは不安と渇望の裏返し。
落ち込んだあなたにわたしは歌を歌おう。わたしたちは今日から共に生きるのだから。
(06.11.25)ドロロはある意味小隊一独占欲が強いと思う。
寂しさと孤独も依存したくないけれど、傍に居て欲しい。
手に入れたくて全部欲しくて、でも束縛はしたくない。わたしの中ではこんな不憫な人。
彼らの独占欲〜ドロロ編〜