「タールルー!!早く来てっ!」 「待つっすよ!
!!」
午後、平日だからか人のまばらな公園に元気な影が二つある。 緩慢な午後の陽気に負けずはしゃいだ声を出す
と必死に追うタルルだ。
は落ち葉を掻き分けながら、むしろそれにじゃれるようにして遊んでいる。 ようやく追いついて、タルルは呆れたように呟いた。
「そんなことしてると、また転ぶっすよ?」 「こーろばないもん!」 「そう言って、もう二回も転んでるじゃないっすか」
楽しそうな
とは反対に、タルルの声は拗ねている。 急な出動が多いタルルは急な休日も多い。 その合間を縫ってせっかく外に出たというのに、
は先ほどから自分よりも落ち葉に夢中だった。 電話もメールも碌に返せなかったからおわびのつもりで遊園地にでも行こうと誘ったのに近くの公園がいいと言われ、したがってみれば自分はないがしろにされている。 これでは、少々意地の悪いことを言いたくなってしまうというものだ。
はそれでも笑顔を崩すことはなく、くるくると落ち葉の上で回転する。
「
」 「なぁに」 「やっぱ、怒ってるンすか?」
これは彼女なりの意地悪なのだろうか。 帰ってきても訓練に明け暮れ、自分を顧みないことを間接的に責められている気がしてならない。 これは口に出すべきではないとわかっていたけれど、出さずにはいられなかった。 しかし
はきょとんとした瞳で見つめ返し、それから柔らかく笑った。
「ふ、ふふっ!タルルは馬鹿ね」 「な、馬鹿とはなんすか!」 「馬鹿よ。あのねぇ、わたしはね」
数メートルの距離を一歩で縮め、
が至近距離に立った。そうして俺の手を握る。何の防寒具もつけてなかったお互いの手は、氷のように冷たかった。それからすぐに、二つの体温が一緒になって熱を増す。
「わたしはね、タルルと一緒にいられればいいの。別に流行りの場所に行きたいわけじゃない」 「…………でも」 「お仕事があるのもわかってるし、タルルが強くなりたいのも知ってる。だからね?」
鼻が付きそうなくらいの至近距離で、彼女は目をあわせる。
「春には桜を、夏には入道雲を、秋はこうやって落ち葉を二人一緒に見られれば、わたしそれだけで幸せなのよ?」
そうして、軽いキスをした。甘すぎるキスと背伸びをした彼女があんまりにも可愛らしくて、どうしても笑顔になる。自分よりも何よりも、彼女は幸せを見つけるのが上手いらしい。 もう離れないように手を握り返し、タルルは笑った。
「じゃ、冬は雪を見なきゃいけないっすね」 「ユキ?」 「そうっす。地球で降る白くて小さくて冷たい綺麗なものなんだって、タママ師匠が言ってたから」
ケロンの優れた科学力のおかげで雪が降らないこの土地は、感性豊かな彼女を閉じ込めておくには狭すぎる。 雪を想像しだした彼女は、目をキラキラさせてタルルを見つめた。 あぁ、そうだ。その顔が見たかった。
「それ素敵!タルル、連れてって!」 「もちろんすよ!」
君の笑顔が途切れないように、手を繋いで歩いていこう、きっとどこまでも。
(06.12.03)彼の独占欲は、爽やか青少年。いつも一緒に居たいし、同じものに喜びたい。
ちゃんと同じ目線で、新しい発見をして、手を繋いで歩幅をあわせて進んで生きたい。
それもやっぱり、誰かを留め置きたい我侭な心。 彼らの独占欲〜タルル編〜
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