先日、ようやくこの小隊に五人目のメンバーが加わった。 ケロン軍の方針により、一部隊は五名一組で任務に当たらなければいけない。それなのに、ケロロのやつがもたもたしているからいつまでも四人のままだった。まともな任務に付けやしないとオレは愚痴を零したりもした。それをアイツが汲んでくれたかはわからないが、そう、やっと五人揃ったのだ。
「あ、おはよう。ギロロ君」 「なんだ、ゼロロか」
説明やら書類処理やらで、加わったメンバーはまだ見たことはなかった。それがどうやら今日、来るらしい。訓練もほどほどに、オレは作戦ルームに向かっていた。多分、ゼロロも同じだろう。いつものように優しげな笑みをたたえたまま、オレの隣に並んで歩き出す。
「もう来てるんだよね。新しく、入る子」 「そうだな……。ケロロの話じゃ、クルルよりも年下らしい」 「そうなんだ。でもケロロ君凄く喜んでたから、きっと凄い人だよね」
ゼロロが穏やかに告げる。そうだ。五人目を見つけてきたケロロの喜びようといったら口では言い表せないほどのものだった。 とにかく凄い兵士を一人見つけたとはしゃぎ、宝くじが当たるよりも低い確率だと喚き、一流の突撃兵だと賛美した。その様は送られてきた映像で、まだ残っているはずだがもう見ることはないだろう。なにしろあの馬鹿はそれだけ褒めちぎった兵士の名前はおろか年齢も特技も言わなかった。ただ素晴らしい突撃兵とだけ笑って、じゃあまた!と一方的に通信を切ったのだ。クルルよりも年下と知ったのだって、未処理の書類を前に忙しく動き回るアイツをようやく捕まえて聞きだしたのだ。どんなやつが来るのか、想像がつかない。
「まぁ、新兵だろうな。この時期に配属されたヤツは大抵スカウトだろうし」 「でも突撃兵のスカウトって…………あんまりいい話聞かないよね」
ゼロロが顔を曇らせた。ほとんどの軍人が幼年訓練所から自分の適性を見極められた上で入隊するのに対し、スカウトはその実力を買われて入隊するのだ。オペレーターや技術兵ならその腕を買われてということもあるだろうが、突撃兵などの実力主義は話が違う。実際に現場で役立つと判断されるということは、そういう現場を押さえられている。犯罪者などは罪の放免のため軍部へ入るやつも少なくなかった。
「さぁな。そうかもしれんが、あのケロロが選んできたんだ。そう悪いやつじゃないだろう」 「だ、だよね。あんまり怖い人だったら上手くやっていけるか心配だけど」
あんまり心配そうに言うものだから、オレは思わず笑ってしまった。 アサシンのトップにビビられる新入りなんて、聞いたことがない。
「なんだ…………これは?」 「おお、ギロロ、ゼロロ!時間ぴったりでありますな!」
作戦ルームに入った瞬間、口をついて出たのはそんな言葉だった。久方ぶりに見るケロロは未処理の書類に埋もれていたことなど嘘だったようにあっけらかんとオレたちを迎えた。珍しいことにクルルがもうすでに座っている。だが、そんなことよりも驚いたのはなによりケロロの隣にいるやつだった。今日は新しく入隊したヤツと顔合わせだったはずだ。それなのに、なんだこれは。
「さぁさ。みんな揃ったところで、ちゃっちゃと自己紹介しちゃおうか〜。みんなの説明は済んでるから、名前だけでいいでありますよ〜」
のほほんとしたケロロの声が遠く聞こえる。隣のやつがぺこりと頭を下げた。 ちょっと待て。今日は新しく加わった突撃兵を見にきたんだ。ケロロが選りすぐった素晴らしい兵士だとそう思ってたんだ。俺と肩を並べて戦うやつだと。そう思っていたんだ。それなのに、これはどういうことだ?!
「
です。今日からお世話になります」
高い声が、物怖じせずにそう告げた。一瞬、脳がフリーズする。
「女じゃないか!」
誰か、これは夢だと言ってくれ!
(06.11.16)
|