「…………あちゃー」


おみくじを一緒にひきたいとせがむ彼女と一緒に、くじを引いた。けれどは先ほどから自分のくじを見たまま引きつり笑いを浮かべている。


「どうしたんだ?」
「グレイ。………あのね、人生初、大凶を引きました」


あはは、と空笑いするは見た目よりよっぽど堪えているらしい。先ほどまで振袖を着て上機嫌だったというのに、笑顔が曇ってしまっていた。


「あ、グレイは? なんだったの?」
「俺か? ……俺は」
「言いにくいほど悪いの? って!大吉!!いいなぁ!」


俺の手元を覗き込んだが歓声をあげる。確かに大吉を引いたが書いてあることは勉学に励めなど、一般的なことばかりだ。可もなく不可もなくといった運勢だが、大凶のには不運しか書いていないわけだから羨ましいのだろう。
は俺のくじをしげしげと眺めたあと、不意に近寄って目をあわせた。まるで周りに聞こえないようにするように、ぴったりとくっついて。


「ね、グレイ。これ……交換しない?」


小首を傾げ、自分の手元の大凶で口元を隠すは照れているのか赤くなっている。
振袖を着ているのでいつもと違った空気をまとった彼女は、香りまでおしとやかになったようでグレイはどきりとした。正確に言えばが言ったとき、動きが止まったほどだ。


「………」
「あ、あれ? グレイ怒った? えーっと、冗談だから。ごめんね、ぐれ」
「そうじゃない。あぁ、悪かった。君があまりにも可愛らしいことを言うから思考が停止した」
「え?」


今度はが真っ赤になる番だった。慌てて体を離そうとするの腰を引き寄せて、グレイは無防備に空いた襟元に鼻先を押し付ける。


「ひゃっグレイ!」
「…………俺のくじは君にあげよう。だから、俺にも幸せをくれないか」
「し、しあわせ?」
「そう」


首筋に埋まったグレイの表情は読めない。いつもよりずっと動きにくい服装なので、身動きすらままならないのが悔しかった。それでも低く濡れたような声が耳に届いたとき、は自分が彼を盛大に煽っていたことに気付く。


「君が、欲しい。…………本当は今すぐに」


あぁ、新年早々、紳士な彼の仮面を外してしまったのはなぜなんだろう。
いや、これが大凶ってことなのかな。はとても失礼な納得をする。













二、 大凶を引いたときに「交換しよっか」と悪戯っぽく聞く。