ブラッドと昼間初詣に行けるという奇跡的なことが起きたはずなのに、運というのは使い切ってしまうらしい。わたしは振袖まできっちり着ている自分が恥ずかしくなる。


「どうしたんだ、お嬢さん」


先ほどから動かないわたしに、ブラッドが気だるげに声をかけてくれた。わたしは勢いよく今しがた引いたおみくじを後ろに隠す。


「ななな、なんでもない!」
「……わかりやすいお嬢さんだな。くじの結果が悪かったんだろう」
「そ、そんなことないよ! それよりブラッドは何を引いたの」
「私か? ほら、大吉だ」
「うっ……」
「君が引きたいと言ったから引いたが…………中身など大差などないだろう。学業などやればできるだろうし、引っ越しや旅行などクジに言われたからするものではない。自分への戒めができない人間の買うものだな」
「そ、そうだよね」
「………まぁ、それに付けても運勢をはかることはできる。今年も私はついているということだろう。さて、お嬢さんは何を引いたのかな?」


悪いのがバレている上に遊ばれている!
後ろに隠した自分のクジを持つ手がしっとり汗ばんでいるのがわかる。ブラッドはにやにやとこちらを見やるばかりだ。わたしのクジを見るまで引く気はないらしい。
わたしはもうヤケになってクジを取り出した。


「中吉……」
「し、知ってた? ブラッド。実は中吉って大吉よりもいいんだから!」
「ほお? それは初耳だ」
「ほ、ほら! 中吉はまだまだ上を目指せる、末広がりって意味だし。可能性に限っては大吉より豊富でしょ!」


もはや自分が何を言っているかわからない。
ブラッドはわたしが差し出した中吉のおみくじを読み進めている。先ほど自分も読んだけれどあまりいいことは書いていなかったはずだ。わたしは自分がなぜ強がりを言ったのか、にわかに恥ずかしくなった。


「………ふむ」
「も、もういいでしょ。ブラッド。枝に括り付けてくるから、返して」
「何故だ? いいクジは持って帰るべきだろう」


そうしてあまりにも自然にわたしの腰は抱かれてしまう。ブラッドはいつもわたしのことを拘束するのが上手だ。それは何を着ていても抵抗できないくらい自然で強制的だから、わたしは呆けてしまう。


「ブラッド?」
「ここ………出産の欄がいい。目の前の男の子どもを産むべし、と出ている」
「いや、なにそれ? そのおみくじ出産の欄あった?」
「おみくじなど大したことを言うわけでもないと思っていたが、なかなかいいことを言うじゃないか」
「いや、だから。なにその運勢。ひとりで来た人が引いたらドン引きするでしょ!」
「なら、我々が引いたのも運だろう。さぁ、帰ろう。。子を産むにはそれ相応に励まなければな」
「えぇぇぇ」


ずるずると来た道を引き返すわたしは結局ブラッドにおみくじを返してもらえなかった。でも本当にそんなことは、断じて書いていなかった。もし本当にそんなことが書いてあるセクハラみくじなら読んだ瞬間に破り捨てている。
あとから聞いた話だと、縁談の欄に「すれ違い多し。相手を見極める必要あり」と出ていたそうだ。わたしは気にしかなかったのに、彼は大いに気にしたらしい。まったく、わたしが見栄を張った意味がない。















三、 男性より悪いクジを引いたとき


「実は中吉が一番いいんだからね!」とツンデレる。