「…………………」


おみくじを引いたのが悪かった。
ナイトメアは過ぎたことを悔やんでいる。さきほど、と初詣に行ったときにおみくじを引いたのだが、それから彼女はふさぎ込んだままだ。こうやって一緒に帰っているというのに口を開かず、項垂れたまま下を向いている。どれだけ悪い運勢を引いたというのだろう。ナイトメア自身は中吉という、普通なものだったからわからない。
なにしろ、はおみくじを握りしめたまま見せてくれないのだ。


「あー……。その、おみくじはそんなに悪かったのか」
「…………」
「私もそれほどよかったとは言えなかったぞ? なにせ、病気の欄には薬を飲めば治るとあったしな。飲んでも治っていないのに、無責任なことを言う」
「………」
「それに、中吉というのも微妙だな。いいのか悪いのかはっきりしてほしい。私としては君との将来のことなんかを事細かく」
「ナイトメア」


ひとりで話し続けていると、やっと彼女が上を向いてくれた。やはり落ち込んだ様子ではあるけれど、顔が見えただけでほっとする。


「あのね、ナイトメア。凶、だったの」
「凶か………」
「そうなの。凶。……こんなに悪いの引いたことない」


そう言って、は立ち止ってまた下を向く。
ナイトメアはなんて声をかけたらいいかわからない。気にするなとは軽々しく言えないし、かといって中身を検証するのは無粋だろう。ではどうすればいいのか。普段、落ち込んでも慰められるのは自分なだけに、ナイトメアはやり方がわからない。
の見えないところでナイトメアがおろおろとし出したとき、ぽつりと彼女が呟いた。


「運勢って、うつったりするかな」


ナイトメアがぽかんと口をあける。


「は?」
「だって、運が悪いと巻き込まれたりするでしょう? 私に悪いことが起きるならともかく、ナイトメアが巻き込まれたりしたら、今だって大して運がよくないのに」
、最後の言葉は聞かなかったことにするが…………私のことは心配いらない」
「どうして? だって今より吐血が多くなるかもしれないし、もっとダメダメになったりしたら」
「…………君のセリフが胸に突き刺さるようだよ。それに、それでも君は傍にいれてくれるんだろう?」


の心配は自分のものというより、とばっちりを受けたナイトメアにあるらしい。ナイトメアは笑っていいのか泣いていいのかわからない。


「もちろん、一緒にいるよ」
「それならいい。君が傍にいれば、例え大凶だとしても私は幸せだ」
「……………ナイトメアの大凶なんて、考えたくないよ」


はそれでも鬱々と落ち込んでいるようだが、ナイトメアはとなりで笑うしかなかった。彼女は自分のことを考えてくれていて、少なくとも離れる気はないらしい。ならば、できることはひとつしかない。
いつもならしないような強引さで、ナイトメアはの手を握る。


「ふたりで一緒に居れば、大抵のことはうまくいく! 私が言うんだから絶対にそうだ!」


また根拠のない自信を……。
は呆れたけれど、ナイトメアの手を握り返す。おみくじに何て書かれていたかは、もうすでに忘れてしまった。


















五、 肩を落として「シュン…………」とする。