「お姉さん! 初詣に行こうよ!」 「行こう行こう! 初詣!」 元旦。新しい年に入ったばかりだというのに、玄関先には元気な双子がやってきていた。朝も早くから――まだ7時にもならない――本当に元気な双子だ。 「どうしたの、二人とも。早いね」 「どうしたもこうしたもないよ! お姉さんと初詣に行きたくて、早起きしたんだ!」 「そうだよ! お姉さんと初詣に行こうと思って頑張って早起きしたんだ!それにここに来る途中ガラの悪そうなのがいたから掃除もしてきたよ!」 「あんなのお正月にいるべきじゃないよ。暴走族っていうのかな。まったく子供に対して有害すぎるよ」 「そうそう。有害すぎるからちゃんと掃除してきたよ。僕らやお姉さんに絡まないように」 「うんうん。一生僕らに絡もうなんて気がおきないようにね」 あわれ、元旦の早朝に因縁をつけられたと見られる不良グル―プはどうしたんだろう。彼らにとってはディーやダムと目があったことを後悔するしかない。 わたしは何も聞かなかったことにして、笑う。 「そう。じゃあ、支度をしてこようかな。待っていてくれる?」 「うん! あ、でも晴れ着じゃなくていいよ。お姉さん!」 「晴れ着って脱がしにくいから、普段着でいいよ!お姉さん!」 「……………何故かなぁ。ものすごく晴れ着が着たくなってきた」 双子を子供として見てはいけない。彼らがいかに子供っぽくても、猛獣を相手にしていると心しなければ。 けれど、いきなりやってこられて晴れ着を着るからと一時間以上も待たせるわけにもいかない。仕方がないので無難な服でお参りにいくことにした。もちろんボディガードのように二人が両側にぴったりとくっついている状態だ。神社に行く前に、なぜか不自然なタイヤ痕が川につながっていた気がしたが、やはりこれも見なかったことにした。 「わーやっぱり人が多いね!兄弟!」 「多いね、兄弟。しかも大人ばかりだから邪魔だよ。少し減らそうか」 「減らさなくていいから。ほら、二人ともおみくじ引くんでしょう?」 道すがら、ふたりがどうしてもおみくじが引きたいと言っていたことを思い出した。 なぜか、二人は猛烈におみくじが引きたいらしい。 「そうだね! おみくじを引かなくちゃ!」 「あ、兄弟。あそこに巫女のお姉さんがいるよ。あそこで引くみたい」 「ホントだ。あそこみたいだ。…………ねぇ、兄弟。思ったんだけれど巫女服ってアリじゃないかな」 「僕もそう思ったよ。巫女服なら脱がしやすそう。手を突っ込むところもたくさんありそうだし」 「何の話してるの、あなた達。さ、さっさと引きましょう」 恐ろしい話をしている双子を急かして、三人でクジを引いた。わくわくとした顔をしてれば、二人とも可愛らしいのに、とわたしは思う。 「あ、せっかくだし『せーの』で開けてみようか?」 不謹慎かもしれないが、わたしは提案する。けれどゲームの好きな双子は乗ってくれた。 「いいね! 兄弟には負けないよ!」 「僕だって負けないよ。さ、お姉さん準備はいい?」 「うん。わたしだって、いいのを引いたよ。きっと」 いっせーの! ばっと開かれたおみくじ。その上部に書かれた文字を三人が追う。 「やった! わたし大吉!」 「………………」 「………………」 喜んでつい声をあげてしまい、わたしはしまったと思う。わたしは確かに大吉だった。けれど、二人はそろって吉だったのだ。 「…………吉、だって。兄弟」 「そうだね、兄弟。……………吉」 「き、吉もいいものだよ。ほら、探し物はすぐに見つかるって」 「でも大吉じゃない!お姉さんは大吉だけど、僕らは違う」 「そうだよ。僕ら、大吉がよかった」 しゅん、と項垂れる二人に今度はわたしが焦る番だ。いつも元気な双子だから、こういうときにどうしたらいいかわからなくなる。 けれど、そんなふうに同情的になってはいけないと何故わたしは学ばないのだろう。ディーがふと気づいたように顔を上げた。 「そっか。いいことを思いついたよ、兄弟。お姉さんが大吉を引いたじゃないか」 「そうだね、兄弟。お姉さんが大吉を引いた」 「え?え?ふたりとも」 「お姉さんが大吉を引いたんなら、お姉さんごと大吉をもらえばいい。そしたら僕らも大吉だよ」 「そうだね。お姉さんごともらっちゃえば、僕らだって大吉だよ。頭いいね、兄弟」 二人で納得しているところ悪いのだけれど、帰っていいだろうか。 わたしは一歩彼らから下がろうとして、がしりと腕をつかまれた。子供とは思えないほどの握力だ。自分の両腕からもう一度彼らを見てみれば、なるほどすでに彼らは青年の姿をしていた。道理で腕が痛いほどの握力のはずだ。 「逃げないでよ、お姉さん。僕らの大吉」 「そうだよ、お姉さん。すっごく………気持ち良くしてあげる」 なにせ、大吉だからね。 何を言ってるんだこの未成年。わたしはすんでのところでセリフを飲み込んだ。彼らからどうやって逃げようか。というか、本当に大吉を引いたんなら逃げ道を用意してくれてもいいんじゃないか。神様にケチをつけても、運命は変わりそうにない。 |
八、「いっせーので見せ合いっこしよう」と提案する。